鉄欠乏生貧血[主な症状および所見]
(1)貧血に伴う症状
貧血全般に共通する症状として、先にも記載した動悸、息切れ、全身倦怠感、易疲労感など、めまい、耳鳴り、頭痛および皮膚粘膜の蒼白などの症状を示す。
ただし、とくに月経関連の鉄欠乏性貧血などは、潜在的に徐々に進行することから本人が症状を自覚していないこともしばしばあり、高度の貧血にもかかわらず、検診などで偶発的に見つかるケースもある。
(2)鉄欠乏性貧血に特徴的な症状
鉄欠乏性貧血に特徴的な症状としては、爪の中央部が陥没する匙状爪(spoon nail)、舌乳頭萎縮、喉頭粘膜萎縮による固形物の嚥下困難(プラマー・ヴィンソン(Plummer-Vinson)症候群)、異食症(土、鉄鍋をかじったり、氷を大量に食べたりなどの異常な食行動)などが有名な症状であるが、実際に遭遇する頻度は低い。
そのほか、鉄欠乏性無力症と呼ばれる貧血の有無とは関係ない易疲労感などがある。実際、自覚症状に乏しかった鉄欠乏性貧血患者でも、治療により鉄欠乏が改善すると体が軽く、体調が良くなったと自覚することが多い。
[臨床検査]
貧血の鑑別診断を行う上で重要なものに次の2つが挙げられる。
①平均赤血球容積(MCV:mean corpuscular volume)
次の式で計算される。
MCV(fL)=Ht / RBC(×10^12/L)
MCVが低下する貧血を小球性貧血、正常のものを正球性貧血、上昇するものを大球性貧血という。
②網状赤血球数
骨髄内の赤血球造血を反映する。
鉄欠乏性貧血ではMCVが低下することが特徴的であり、本症を疑うきっかけとなる。
(1)鉄代謝関連検査
血清鉄(Fe)濃度は低下し、総鉄結合能(TIBC)は増加する。その結果、鉄飽和度(Fe / TIBC)は低下することになる。
鉄飽和度が17%以下の場合、鉄欠乏性貧血を強く示唆する。血清フェリチンは貯蔵鉄の指標として重要であり、上記を満たし血清フェリチン値が12ng / mL以下であれば、鉄欠乏性貧血の診断が確定する。MCVが低下する代表的な貧血に慢性炎症に伴う貧血、サラセミアがあげられるが、これらはいずれもフェリチン値は低下しない。