呼吸管理②
【換気不全の分類】
A 換気量の減少
1 換気中枢の機能不全
薬剤性(鎮痛薬鎮静薬の過量)
先天性(先天性中枢性低換気症候群、新生児突然死症候群?)
後天性(脳欠陥障害、脳腫瘍、頭部外傷)
2 神経伝達障害
頸髄損傷(外傷、腫瘍など)
前角細胞障害(筋萎縮性側索硬化症、ポリオ)
変性疾患(ギラン・バレー症候群)
横隔神経障害(外傷、腫瘍、術後など)
3 呼吸筋障害
薬剤性(筋弛緩薬投与)
筋疾患(筋ジストロフィー、多発性筋炎)
神経筋接続障害(重症筋無力症、ボツリヌス症、破傷風)
電解質異常(低リン酸血症、低カリウム血症)
呼吸筋疲労(喘息の重積発作、COPDの急性憎悪)
4 胸郭の異常
可動性の低下(脊髄側湾症、重度の気胸や胸水、胸膜肥圧、高度肥満)
剛性の消失(重度のフレイルチェスト)
B 気道の障害
1 上気道閉塞
気道異物、腫瘍、クループ、喉頭痙攣や浮腫、睡眠時無呼吸
2 抹消気道閉塞
喘息重積発作、COPDの急性憎悪
C 死腔換気の増加
1 高い換気血流比
ARDS、重度のCOPD
2 外部での死腔付加
不適切な呼吸回路など
3 肺血流の減少
ショック、心肺蘇生時、過度のPEEP付加、肺塞栓症(代償機転の換気量増加が不十分な場合)
D Co2産生量の増加
1 炎症、代謝亢進
発熱、敗血症、広範囲熱傷
2 肺活動の亢進
痙攣、ふるえ、不穏状態
3 代謝異常
カロリー(特に糖質の増加)の過剰投与による呼吸商の増加を伴う場合
以上のように呼吸不全には様々な病態が含まれているが、人工呼吸の適応は酸素化能の低下と(肺胞)換気低下の場合である。肺自体に病変はなく、治療に速やかに反応する二次的な呼吸不全、たとえば、高度の上昇に伴う吸入酸素濃度の低下、気胸による呼吸不全、貧血による酸素運搬能低下などのように、吸入酸素濃度の上昇、脱気、輸血などの治療によって直ちに改善する場合は、それらの治療を行うことによって、呼吸不全は速やかに改善され、人工呼吸器の適応となる場合は少ない。また、麻酔薬などの遷延による換気不全、舌根沈下も拮抗薬や一時的な呼吸管理のみで改善される。
しかし、それ以外の換気不全や酸素化不全の患者では、その改善に時間を要し、呼吸不全が生命を脅かすこととなるため、対症療法的に人工呼吸が使用される。
【微量元素とビタミン】
血清リン濃度と最大吸気圧との間に相関がみられ、呼吸不全患者の栄養管理にはリン濃度を正常に保つことは重要である。ビタミンA欠乏が肺実質の傷害とⅡ型肺細胞の機能障害をきたすとされており、ビタミン類特にA、E(サーティファクト合成)の適切な投与が必要である。
栄養管理は比較的地味な仕事であり、呼吸管理においても、「不足すればよくない」程度がおおかたの認識ではないかと思う。しかしより優れた栄養管理は呼吸不全患者の治療により優れた結果をもたらす呼吸管理上不可欠なものである。